車を買い替えたときや新しいモデルに交換したとき、手元に残ったカーナビ。
「まだ使えるのにもったいない…」「自宅でオーディオ代わりにしたり、次の車に取り付ける前の動作確認に使えないだろうか?」と考えたことはありませんか?
この記事では、そんなあなたのための「カーナビを家で使う」方法を徹底解説します。
そもそもカーナビは何ボルトで動き、家庭用コンセントから電源を取るにはどうすれば良いのか。
また、複雑に思えるカーナビを家で使う配線の基本から、自宅で起動させてテレビを見るためのポイント、さらには市販の自宅キットや、裏技として知られるカーナビの自宅電源にWiiのアダプターを流用する方法まで、動作確認を自宅で行いたいと考えている方が知りたい情報を網羅しました。
正しい知識を身につけて、愛着のあるカーナビを第二のステージで活躍させましょう。
カーナビを家で使うために必要な知識と準備
- カーナビは何ボルトで動くのか解説
- 必要な電源の種類とアンペア数
- カーナビを家で使う配線の基本
- 家庭用コンセントで電源を確保する方法
- カーナビのテレビを自宅で見るには?
カーナビは何ボルトで動くのか解説

カーナビを家で使おうと考えたとき、最初に理解しておくべき最も重要な点は「電圧」です。
結論から言うと、一般的な乗用車向けのカーナビは「直流12V(ボルト)」で動作します。
なぜなら、自動車のバッテリーが供給する電圧が12Vだからです。
カーナビをはじめ、車内で使用されるほとんどの電装品は、この12Vの電源で動くように設計されています。
一方で、私たちが日常的に使用している家庭用コンセントの電圧は「交流100V」です。
直流(DC)と交流(AC)の違い
少し専門的に聞こえるかもしれませんが、この違いを理解することは安全のために不可欠です。
「直流(DC)」は電気が常に一方向に流れるのに対し、「交流(AC)」は電気の流れる方向が周期的に変化します。
水流に例えるなら、直流は「川の流れ」のように一定方向に進み、交流は「波」のように行ったり来たりを繰り返すイメージです。
カーナビは、この直流の電気でしか動きません。
電圧も電気の種類も全く違う!
カーナビが要求する「直流12V」と家庭用コンセントの「交流100V」は、電圧の数値が違うだけでなく、電気の種類(直流・交流)そのものが異なります。
そのため、カーナビの配線を直接家庭用コンセントに差し込むことは絶対にしないでください。
カーナビ内部の精密な電子回路は交流100Vの高電圧に全く対応しておらず、接続した瞬間に回路が焼き切れ、修復不可能なダメージを負います。
機材の故障はもちろん、ショートや火災の原因となり非常に危険です。
この電圧と電気の種類の違いを安全に変換してくれるのが、後述する「AC-DCコンバーター」の役割となります。
ちなみに、トラックなどの大型車は24Vのバッテリーを搭載しているため、24V対応のカーナビも存在しますが、一般的な乗用車から取り外したものであれば、まず12V仕様と考えて良いでしょう。
必要な電源の種類とアンペア数

カーナビを自宅で起動させるには、単に12Vの電源を供給するだけでは不十分です。
カーナビは、主に3種類の電源線を接続することで正常に機能します。
それぞれの役割を正しく理解し、適切に接続することが、安定した動作の鍵となります。
電源線の種類 | 一般的な配線色 | 役割 |
---|---|---|
常時電源(BATT) | 黄色 | 時計や各種設定、保存した音楽データなどを保持するための電源。常に電気が流れている必要があります。車のバッテリーに直接繋がる線です。 |
アクセサリー電源(ACC) | 赤色 | カーナビ本体を起動・終了させるためのトリガーとなる電源。車のキーをACCポジションに回したときに電気が流れます。 |
アース(GND) | 黒色 | 電気のマイナス側。これを接続しないと回路が成立せず、カーナビは動作しません。車の金属ボディ部分に接続される線です。 |
カーナビを家で動かすには、この「常時電源」と「アクセサリー電源」の両方にプラスの電気を供給し、「アース」をマイナスに接続する必要があります。
もしACCだけに接続すると、起動はしても設定が毎回リセットされてしまいます。
アンペア数も重要:なぜ容量が必要か
もう一つ考慮すべきなのが「アンペア(A)」、つまり電流の量です。
カーナビのモデルによって消費電力は異なりますが、一般的には3A〜5A程度の電流を必要とします。
特に、HDDを内蔵した古いモデルや高機能なモデルは、起動時にモーターやバックライトを動かすために大きな電流(突入電流)を必要とすることがあります。
そのため、電源として使用するACアダプターは、少なくとも5A、できれば10A程度の容量があると、ほとんどのモデルで安定した動作が期待できます。
アンペア数が不足するとどうなる?
もしACアダプターのアンペア数が不足していると、以下のような症状が発生することがあります。
- 電源が入らない、またはすぐに落ちる
- 起動と再起動を繰り返す(ブートループ)
- 画面がちらつく、または暗くなる
- CDやHDDなどのメディアを読み込まない
これらの症状が出た場合は、まず電源の容量不足を疑ってみましょう。
カーナビを家で使う配線の基本

電源の種類を理解したら、次はいよいよ実際の配線です。
カーナビ本体の背面には、様々なケーブルを接続するためのコネクターがありますが、電源に関連するのは特定のコネクターに接続された「電源ハーネス」です。
このハーネスから伸びる配線を正しく見分け、ACアダプターに接続します。
配線色の確認
多くのカーナビでは、業界で標準化された配線色が採用されています。
- 黄色:常時電源(BATT)
- 赤色:アクセサリー電源(ACC)
- 黒色:アース(GND)
基本的には、ACアダプターのプラス側を黄色の線と赤色の線の両方に接続し、マイナス側を黒色の線に接続します。
これにより、カーナビは「常に設定を保持しつつ、起動の命令も受け取れる状態」になります。
ちょっと待って!
配線色はメーカーや機種によって異なる場合があります。
特に海外メーカー製や古いモデルでは独自の配色がされていることも。
最も確実なのは、カーナビの取扱説明書やメーカーの公式サイトで配線図を確認することです。
思い込みで接続すると故障の原因になるので、必ず確認しましょう。
ギボシ端子を使った接続
カーナビの配線には、一般的に「ギボシ端子」という弾丸型の接続端子が使われています。
ACアダプター側もこれに合わせてギボシ端子加工をしておくと、抜き差しが簡単になり、非常に便利です。
電工ペンチという専用工具があれば、比較的簡単に加工できます。
ACアダプターのプラス線を途中で分岐させ、それぞれにギボシ端子(メス)を取り付ければ、カーナビ側の常時電源(オス)とアクセサリー電源(オス)の両方にスマートに接続できます。
電源ハーネスには他の線も
電源ハーネスには、スピーカー線(白、灰、緑、紫など)やイルミネーション線(橙)、パーキングブレーキ線(若草色)なども含まれています。
音を出したい場合はスピーカー線を、設定操作を行いたい場合はパーキングブレーキ線を接続する必要がありますが、まずは電源を入れてみるだけなら、BATT、ACC、GNDの3本で十分です。
家庭用コンセントで電源を確保する方法

カーナビを家で動かすための核心部分、それが家庭の「交流100V」をカーナビ用の「直流12V」に変換する装置の準備です。
この役割を担うのが「AC-DCコンバーター」や「ACアダプター」と呼ばれる製品です。
これらは、家電量販店やホームセンター、インターネット通販などで簡単に入手できます。
AC-DCコンバーターの種類と比較
主に2つのタイプがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
- ワニ口クリップタイプ
先端がワニ口クリップになっており、カーナビの配線を直接挟んで接続できます。ギボシ端子がない配線でも手軽に接続できるのがメリットですが、クリップが外れたり、他の線に触れてショートしたりしないよう注意が必要です。 - シガーソケットタイプ
車のシガーソケットと同じ形状の出力端子を持つタイプです。カーナビだけでなく、他のカー用品を家で使いたい場合に便利ですが、カーナビの配線を接続するためには、別途「シガーソケット(メス)付きケーブル」などを用意して配線加工する必要があります。
ACアダプター選びのポイント
- 出力電圧:必ず「DC12V」であることを確認してください。
- 出力電流:前述の通り、最低でも5A以上の容量があるモデルを選びましょう。HDDナビなどを使うなら10Aあると、より安心です。
- PSEマーク:日本の電気用品安全法の基準を満たしている証である「PSEマーク」が付いている製品を選びましょう。特に安価な輸入品の中にはこのマークがないものもあり、安全性に懸念が残る場合があります。
アマチュア無線家などが使用する「安定化電源」も、大容量でノイズの少ない高品質な電源を供給できるため理想的ですが、比較的高価でサイズも大きいため、カーナビ用途のためだけに購入するのは少し大げさかもしれません。
カーナビのテレビを自宅で見るには?

カーナビの機能の中でも人気の高いテレビ機能。
「せっかく家で使うならテレビも見たい」と考える方も多いでしょう。
しかし、カーナビ本体だけではテレビ放送を受信することはできません。
テレビを見るためには、電波を受信する「地デジアンテナ」が別途必要になります。
車に取り付けていたフィルムアンテナなどを取り外して持っている場合は、それを接続します。
フィルムアンテナは一度剥がすと再利用が難しいですが、アンテナ線だけでも流用できる場合があります。
手元にない場合は、新たに購入する必要があります。
アンテナの接続と注意点
カーナビのアンテナ入力端子は、「SMA端子」や「GT13端子」といった特殊な形状をしています。
これは家庭用テレビの「F型端子」とは異なります。
そのため、自宅の壁にあるテレビアンテナ端子に接続したい場合は、アンテナ線の端子形状を変換するアダプターが必要になります。
アンテナを接続できたら、ナビの設定画面からお住まいの地域に合わせてチャンネルスキャンを行えば、自宅でもテレビを視聴できるようになります。
電波が安定している室内では、車内よりもクリアなフルセグ映像を楽しめるかもしれません。
B-CASカードを忘れずに!
地上デジタル放送を視聴するには、「B-CASカード(またはmini B-CASカード)」が必須です。
これはデジタル放送の暗号を解除するための「鍵」の役割を果たします。
ナビ本体に内蔵されているか、側面の専用スロットに挿入されているかを確認してください。
これがなければアンテナを接続してもテレビは映りません。
実践!カーナビを家で使う具体的な方法
- 市販されているカーナビの自宅キット
- カーナビの自宅電源にWiiアダプタ流用
- 自宅での動作確認と初期化の手順
- 自宅で起動しない場合のチェック項目
- まとめ:安全にカーナビを家で使うには
市販されているカーナビの自宅キット

「カーナビを家で使うための専用キットはないの?」と思うかもしれませんが、実は「(特定のナビモデル名)専用 自宅キット」という名称で販売されている商品はほとんどありません。
しかし、心配は不要です。
前述した「AC-DCコンバーター(12V/5A以上)」が、実質的に自宅キットの役割を果たします。
インターネット通販サイトで「AC-DC 変換アダプター 12V 10A」のように検索すれば、ワニ口クリップやシガーソケットが付いた、まさにこの用途にぴったりの製品が多数見つかります。
つまり、特定のカーナビ専用品を探し回る必要はない、ということです。
品質の良い汎用のAC-DCコンバーターを一つ用意すれば、それがあなたのカーナビにとっての「自宅キット」になります。
一部のオンラインショップでは、AC-DCコンバーターにあらかじめギボシ端子を取り付けた状態で「カーナビ動作確認用電源キット」として販売している場合もあります。
配線加工に自信がない方にとっては、こうした商品を選ぶのも一つの手です。
手軽さと安全性を重視するなら、市販のAC-DCコンバーターを利用するのが最もおすすめの方法と言えるでしょう。
カーナビの自宅電源にWiiアダプタ流用

DIYに慣れている方の間で知られている裏技的な方法が、任天堂のゲーム機「Wii」のACアダプターを流用することです。
Wiiアダプターが使える理由
WiiのACアダプターは、出力が「DC12V 3.7A」となっており、カーナビが必要とする電圧と一致しています。
中古ゲームショップやリサイクルショップなどで数百円程度で手に入ることもあり、コストを徹底的に抑えたい場合に魅力的な選択肢となります。
ただし、この方法にはいくつかの注意点があり、電気工作の知識を持った上での自己責任での作業が前提となります。
加工方法と注意点
- アダプターの切断
Wii本体に接続する側の灰色で特殊な形状のコネクターを、ニッパーなどで根本から切断します。 - 配線の被覆剥き
切断したケーブルの黒い外皮膜をカッターなどで慎重に剥きます。中には、中心を走る線(ビニールで覆われている)と、その周りを覆う網状の線が現れます。 - プラスとマイナスの特定
中心の線がプラス(+)で、外側の網状の線がマイナス(ー)です。ここを間違えるとナビが故障するので絶対に間違えないでください。 - 端子加工
プラス線とマイナス線、それぞれにギボシ端子などを取り付けます。プラス線を2股に分岐させておくと、常時電源とアクセサリー電源の両方に接続できて便利です。
Wiiアダプター流用のデメリット
- 加工の手間とリスク:配線を間違えるとショートや故障の原因になります。電気工作の知識がない方、自信がない方にはおすすめできません。
- 電流容量の不足:出力が3.7Aと、やや心許ないのが最大のデメリットです。消費電力の少ないメモリーナビなどでは問題なく動作する報告も多いですが、HDDナビやDVD再生など、モーターを駆動させる機能を持つモデルでは、容量不足で起動しない、または動作が不安定になる可能性があります。
あくまで「そのような方法もある」という一つの選択肢として捉え、挑戦する場合は十分な知識と注意をもって行ってください。
自宅での動作確認と初期化の手順

無事に配線が完了したら、いよいよ電源を投入して動作確認です。
また、カーナビを売却・譲渡する前には、個人情報保護の観点から必ずデータの初期化を行いましょう。
この初期化操作には、少しだけコツが必要です。
動作確認のポイント
ACアダプターをコンセントに差し込むと、ナビが起動するはずです。
以下の項目が正常に機能するかチェックしましょう。
- 電源がON/OFFできるか
- 起動画面から地図画面まで正常に表示されるか
- タッチパネルはズレなく反応するか
- スピーカーから音は出るか(テスト用のスピーカーを接続)
- CDやSDカードなどのメディアを読み込むか
- 各種設定画面は開けるか
初期化のための重要テクニック:「パーキングブレーキ線」の処理
設定画面から「工場出荷状態に戻す」などの初期化メニューを選択しようとすると、「安全のため、停車中にサイドブレーキをかけて操作してください」というメッセージが表示され、操作できないことがほとんどです。
これは、運転中に危険な操作をさせないための安全機能です。
このロックを解除するには、「パーキングブレーキ線」をアースに接続(アースに落とす)必要があります。
カーナビの電源ハーネスの中にあるパーキングブレーキ線(一般的に若草色や薄緑色)を見つけ、その先端の導線をアース線(黒色)に接続するか、カーナビ本体の金属部分(ケースを留めているネジなど)に接触させます。
これにより、ナビは「サイドブレーキが引かれている=停車中」と認識し、全ての操作が可能になります。
この状態で設定メニューを開き、「全データ消去」や「初期化」を実行すれば、自宅の住所や登録地点、走行履歴などの個人情報を完全に消去できます。
売却や譲渡の前には必須の作業です。
自宅で起動しない場合のチェック項目

「完璧に配線したはずなのに、電源が入らない…」そんな時に確認すべき項目をまとめました。
慌てずに、コンセントからプラグを抜き、一つずつ原因を切り分けていきましょう。
チェック項目 | 確認内容 |
---|---|
配線ミス | 最も多い原因です。常時電源(黄)とアクセサリー電源(赤)の両方にプラスが接続されていますか?アース(黒)はマイナスに接続されていますか?プラスとマイナスを逆に繋いでいませんか?端子の接触不良はありませんか? |
ACアダプターの容量不足 | 特にWiiアダプターなどを流用した場合、ナビの要求する電流に対して容量が足りていない可能性があります。起動しようとしては落ちる、という症状は典型的です。より大容量のアダプターで試してみてください。 |
ACアダプターの故障 | アダプター自体が故障している可能性も考えられます。通電を示すLEDランプなどがあれば点灯しているか確認します。テスターがあれば、12Vが出力されているか確認してみましょう。 |
ヒューズ切れ | カーナビ本体の背面や電源ハーネスの途中に、過電流から本体を守るためのヒューズが付いている場合があります。ガラス管やプラスチックのケースに入っているので、中の金属線が切れていないか確認し、切れていれば同じ容量のヒューズと交換してください。 |
カーナビ本体の故障 | 上記のいずれにも当てはまらない場合、残念ながらカーナビ本体が故障している可能性が考えられます。車から取り外すまでは正常に動いていたか、思い出してみましょう。 |
トラブルシューティングを行う際は、必ずACアダプターをコンセントから抜いた状態で行ってください。
通電したまま配線を触ると、ショートさせてしまい、さらなる故障の原因になります。
安全第一で進めましょう。