Android Autoをディスプレイオーディオで利用する際、特に高速道路のトンネル内でナビの自車位置がずれて困った経験はありませんか?
その精度の鍵を握るのが車速パルスです。
この記事では、そもそも車速パルスとは?という基本から、お使いのトヨタのディスプレイオーディオ車速パルス対応状況、そしてGoogleマップの車速パルス利用の可否まで、ユーザーが抱える疑問に徹底的に答えます。
さらに、人気のyahooカーナビやmoviLINK、有料でも評価の高いカーナビタイムといったナビアプリが、Android Autoで車速パルス情報をどのように扱っているのかを比較解説します。
また、ライバルであるcarplayの車速パルス対応アプリの状況にも触れ、あなたのカーライフに最適なナビ環境を見つけるための情報を提供します。
Android Autoで車速パルスは使える?基本を解説
- そもそも車速パルスとは?
- ディスプレイオーディオと車速信号の関係
- 高速道路のトンネル走行で精度がわかる
- トヨタのディスプレイオーディオ車速パルス対応は?
- CarPlayの車速パルス対応アプリも紹介
そもそも車速パルスとは?

車速パルスとは、車がどれくらいの速さで動いているかを示す、車両側で生成される電気信号のことです。
具体的には、トランスミッションやABS(アンチロック・ブレーキ・システム)のセンサーがタイヤの回転数を常に監視し、「車がこれだけ進んだ」という情報を断続的な(パルス状の)信号として出力しています。
カーナビゲーションシステムは、この信号を車両の配線から直接受け取ることで、GPSが届かない場所でも自車の正確な移動距離を計算できるのです。
ご存知の通り、GPSは人工衛星からの電波を利用して現在位置を特定しています。
そのため、トンネル内はもちろん、高層ビルが密集する都市部の道路や幾重にも重なった高架下などでは電波が著しく減衰、あるいは完全に遮断されてしまい、正確な位置を把握できなくなります。
しかし、車速パルスと、車の進行方向の変化(角速度)を検知するジャイロセンサーを組み合わせることで、GPSが途絶えても「最後にGPSを掴んだ位置から、どの方向に、どれだけの距離を進んだか」を高精度に算出し、地図上で自車位置を動かし続けることが可能になります。
これが、従来の車載カーナビがスマートフォン単体のナビアプリよりも高い精度を誇ってきた大きな理由です。
自律航法(デッドレコニング)技術の要
このようにGPSのような外部情報に頼らず、車両自身のセンサー情報(車速パルス、ジャイロセンサーなど)のみで位置を推定する技術を「自律航法」または「デッドレコニング」と呼びます。
車速パルスは、この自律航法の精度を根底から支える、極めて重要な情報源と言えるでしょう。
ディスプレイオーディオと車速信号の関係

近年、新車の標準装備としても急速に普及しているディスプレイオーディオ(DA)は、スマートフォンをUSBケーブルやワイヤレスで接続し、スマホ内のナビアプリなどを大画面で利用することを前提とした車載機器です。
この便利なディスプレイオーディオでナビの精度を最大限に高めるには、車両側で生成された車速パルスの信号が、ディスプレイオーディオの配線に正しく入力されている必要があります。
従来のカーナビは、カー用品店などで後付けする際に、車両のオーディオ裏にあるコネクターから車速信号線に接続するのが一般的でした。
しかし、ディスプレイオーディオ、特に初期のモデルや一部の海外製安価な製品では、コスト削減や設計思想の違いから、この車速信号を入力するための配線や端子自体が省略されているケースが見られます。
当然ながら、車両側とディスプレイオーディオが物理的に接続されていなければ、ナビアプリは車速パルスを利用することができません。
購入・取付前に「車速対応」の確認を!
注意点として、ディスプレイオーディオ自体が車速信号に対応していても、その受け取った情報をAndroid AutoやCarPlayのアプリ側にシステムとして提供(パススルー)するかどうかは、機器の仕様やソフトウェアのバージョンによって異なります。
後付けでディスプレイオーディオを選ぶ際は、「車速パルス対応」を明記している製品を選ぶことが、ナビの精度を重視する上で非常に重要です。
高速道路のトンネル走行で精度がわかる

ご自身の車がAndroid Autoで車速パルスを利用できているかを確認する最も簡単で確実な方法は、高速道路にある数キロ以上の長いトンネルを走行してみることです。
例えば、首都高速中央環状線の山手トンネル(約18.2km)や関越自動車道の関越トンネル(約11km)、東京湾アクアラインのトンネル部(約9.5km)などは、GPSが完全に届かない区間が長いため、精度の差が顕著に現れます。
もし車速パルスが正常に機能していれば、トンネル内で渋滞に遭遇し、車が完全に停止した際に、ナビ画面上の自車アイコンもその場でピタッと停止します。
そして、車が動き出せば、それに合わせて滑らかにアイコンも動き出します。
逆に、GPSのみに頼っている場合、自車位置のアイコンがカクカクと動いたり、速度が不正確になったり、最悪の場合は完全にフリーズしてしまいます。
そして、トンネルを抜けて再びGPSを捕捉した瞬間に、大きくズレていた自車位置が現在地にワープするような不自然な動きを見せる場合、車速パルスが利用できていない可能性が極めて高いと言えるでしょう。
安全第一で確認を!
走行中のスマートフォンの画面を注視することは道路交通法で禁止されており、非常に危険です。
位置の確認は、同乗者にお願いするか、必ず安全な場所に停車してから行うようにしてください。
トヨタのディスプレイオーディオ車速パルス対応は?

国内トップシェアを誇るトヨタは、近年の新型車においてディスプレイオーディオを標準装備化する動きを加速させています。
これらの純正ディスプレイオーディオは、新しいモデルを中心に車速パルスに対応しているものが増えており、Android AutoやCarPlay接続時にも、車両からの情報を活用した高精度なナビゲーションが期待できます。(参考:トヨタ自動車公式サイト ディスプレイオーディオ)
ただし、全ての車種や年式で対応しているわけではありません。
特に、ディスプレイオーディオが普及し始めた2019年頃の一部のモデルでは、機能が限定されている場合があります。
ご自身の車が対応しているかどうかの正確な情報を知りたい場合は、グローブボックスに入っている車両の取扱説明書を確認するか、購入したトヨタディーラーに問い合わせるのが最も確実な方法です。
最近の上位モデルのディスプレイオーディオPlusなどでは、車速パルスだけでなく、ジャイロセンサーやGPSアンテナの情報もスマートフォン側に提供することで、限りなく従来の車載ナビに近い、安定した測位精度を実現しようとする進化が見られます。
CarPlayの車速パルス対応アプリも紹介

一方、AppleのCarPlayでは、Android Autoとは車速情報の根本的な扱い方が異なります。
CarPlayの場合、ナビアプリが個別に車のセンサー情報にアクセスするのではなく、まずiOS(iPhoneのオペレーティングシステム)が車両から提供される車速情報やGPS情報を統合し、高度に補正された高精度な位置情報として各アプリに提供する仕組みになっています。
このため、アプリ開発者側からは、生の車速パルス信号が見えているわけではありませんが、結果的にOSレベルで精度が担保された位置情報を利用できるため、多くのアプリで安定した自律航法が可能になっています。
実際に、ナビタイムジャパンの技術ブログで公開されたデータによると、「CarPlay利用ユーザーの車速利用割合はAndroid Autoに比べて高い」という結果が示されており、これはCarPlayが比較的早い段階からOSレベルでの車両連携を標準化してきたことが理由の一つと考えられます。
項目 | Android Auto | CarPlay (iOS) |
---|---|---|
車速情報の扱い | アプリが直接、車速情報を取得できる(DAの仕様に依存) | OSが車速情報等を統合し、補正済みの位置情報をアプリに提供 |
特徴 | アプリ側の対応とDAの仕様の両方が重要。自由度は高いが環境依存性が大きい。 | OSレベルで精度が補正されるため、対応アプリが多く、安定した精度を期待しやすい。 |
代表的な対応アプリ | カーナビタイム, Googleマップ(一部), moviLINK(一部) | Appleマップ, カーナビタイム, COCCHi, Googleマップ |
CarPlayで車速パルス(を利用した高精度な位置情報)を活用できる代表的なアプリには、標準搭載の「マップ」のほか、サードパーティ製では「カーナビタイム」やパイオニア製の「COCCHi」、「Googleマップ」などがあります。
これらのアプリは、iOSから提供される高精度な位置情報を活用することで、トンネル内でも安定したナビゲーションを実現しています。
Android Autoの車速パルス対応アプリと注意点
- Googleマップは車速パルスに対応している?
- Yahooカーナビでの車速パルスの挙動
- カーナビタイムは車速パルスに完全対応
- moviLINKでのナビ精度と車速
- まとめ:Android Autoの車速パルス活用法
Googleマップは車速パルスに対応している?

世界中で最も多くのユーザーに利用されているGoogleマップですが、Android Auto接続時の車速パルス対応については、「ディスプレイオーディオの機種や車両のシステムに大きく依存する」というのが現状です。
一部の新しいディスプレイオーディオや、ホンダやボルボ、ルノーなどが採用する「Googleビルトイン(Google Automotive Services)」搭載車では、車速パルスを始めとする車両情報を深く活用し、高精度なナビゲーションが可能です。
実際に、Googleビルトインを搭載した車両でのテストでは、山手トンネルのような長大トンネルでも、ほとんどズレることなく正確に自車位置をトレースできたという報告があります。
これは、Googleマップが車両の根幹システムと直接連携できている証拠です。
しかし、多くの市販ディスプレイオーディオや標準的なAndroid Auto環境では、まだ車速パルスを完全には活用できていないケースも多く、依然としてトンネル内で自車位置がフリーズする現象が多くのユーザーから報告されています。
Googleマップのメリット・デメリット
- メリット:常に最新の地図と施設情報、強力な音声検索機能、全世界をカバーする網羅性、リアルタイムの交通情報を加味した到着時刻予測。
- デメリット:車速パルスへの対応が環境に大きく依存する、時にすれ違い困難な細い道を案内する傾向がある、オフラインでの利用に制限がある。
ご自身の環境で対応しているかを知るには、前述の通りトンネルを走行してみるのが最も手軽で確実な確認方法となります。
Yahooカーナビでの車速パルスの挙動

無料で高機能なことから国内で絶大な人気を誇るYahoo!カーナビですが、残念ながら2025年現在の情報では、Android Auto接続時に車速パルスを利用した自律航法には公式に対応していません。
多くのユーザーレビューやカーメディアによる検証記事で、トンネルに入るとGPS信号の途絶と共に自車位置が停止してしまう現象が一致して報告されています。
GPS信号が受信できなくなると、位置情報が一切更新されなくなるため、トンネル内に存在するジャンクションの分岐案内などが正常に行われないリスクがあります。
また、GPSだけに測位を頼っているということは、高層ビルが立ち並ぶ都市部の谷間など、空が広く見えない場所でも精度が不安定になりやすいことを意味します。
とはいえ、Yahoo!カーナビにはそれを補って余りある魅力があります。
JARTIC(日本道路交通情報センター)の信頼性の高い交通情報を利用できる点や、高速道路の分岐などを分かりやすいイラストで表示する機能、運転のしやすさを考慮したルート探索など、無料アプリとは思えないほど完成度が高いです。
トンネル走行が少ない市街地での利用がメインの方や、とにかくコストをかけずにナビを使いたい方にとっては、依然として非常に強力な選択肢と言えるでしょう。
カーナビタイムは車速パルスに完全対応

ナビゲーションアプリの草分け的存在であるナビタイムジャパンが提供する「カーナビタイム」は、Android Autoでの車速パルス利用にいち早く、かつ積極的に対応しているアプリの代表格です。
月額制の有料アプリではありますが、その価格に見合うだけの圧倒的な測位精度と、ナビ専門アプリならではの豊富な機能を提供しています。
カーナビタイムは、ディスプレイオーディオから提供される車速パルス情報を、長年培ってきた独自のアルゴリズムで解析・補正します。
これにより、長大トンネルやGPSの届きにくい場所でも、高価な純正カーナビと遜色ないレベルの極めて安定したナビゲーションを実現しています。
実際にパイオニア(カロッツェリア)などのメーカーも、自社のディスプレイオーディオが車速情報などをAndroid Auto側に提供していることを公式に認めており(出典:Pioneer FAQ)、カーナビタイムはこれらの情報を最大限に活用しているアプリの一つです。
「精度」という安心を買う選択肢
月額料金は発生しますが、週末の長距離ドライブや高速道路の利用が多い方、知らない土地でナビの精度に不安を感じたくない方にとっては、最も信頼できる選択肢と言えます。
特に複雑な首都高の分岐などでは、その真価を実感できるはずです。
注意点として、Android Auto連携機能を利用するには、複数の料金プランのうち上位の「プレミアムプラス」コースへの登録が必要です。
契約前には必ず公式サイトで対応機能を確認してください。
moviLINKでのナビ精度と車速

トヨタのコネクティッドサービスの中核を担うナビアプリ「moviLINK」は、もちろんAndroid Autoにも対応しています。
このアプリの最大の強みは、トヨタの純正ディスプレイオーディオなど、対応する車載器と組み合わせることで車速パルスを始めとする車両情報をフル活用し、高精度なナビゲーションが可能な点です。
moviLINKのナビゲーション精度を支えているのは、車速パルスだけではありません。
トヨタが日本中のコネクティッドカーからリアルタイムに収集している膨大な走行データ、いわゆる「プローブ情報」を活用した、極めて精度の高い渋滞情報と到着時刻予測にあります。
安定した自車位置測位と、信頼性の高い交通情報がシームレスに組み合わさることで、ユーザーにストレスの少ない快適なドライブ体験を提供します。
プローブ情報とは?
実際に走行している多数の車両から、位置、速度、時間などの情報を集約し、統計処理して生成される交通情報のことです。
VICS情報が主要な道路しかカバーしないのに対し、プローブ情報は細い道も含めたリアルな交通状況を反映できるのが強みです。
ただし、その優れた性能を最大限に引き出すには、やはり車両側のディスプレイオーディオが車速パルス情報の提供に対応していることが大前提となります。
トヨタ車オーナーで、対応するディスプレイオーディオを搭載しているユーザーにとっては、最有力な選択肢の一つです。